コラム2 日本は本当にダメな国なのか?
コラム2 日本は本当にダメな国なのか?
私の社会人生活のほぼ全ての期間は、日本の所謂「失われた30年」と重なっています。従って、日々読む新聞やニュース、刊行される書籍は、ほぼ全て、日本人のメンタリティや生産性を否定し、欧米を見習いましょう、という論調のものばかり。日本人は会議ばかりして意思決定が遅い。出る杭は打たれ、個性がない。学校では徒競走の順位付けがなくなるなど競争することが避けられる一方、受験勉強に打ち勝つための知識量や問題を解くコツの習得ばかりを教わる。一方では、MBA取得に憧れ、欧米並みに生産性を上げることが素晴らしいとされました。
商社に入り、海外の会社や学校の状況を見るにつけ、こんな日本は負けて当然だ、子供たちには欧米の教育をできる限り受けさせ、いつでも日本から逃だ出せる準備をさせよう、とずっと考えてきました。
しかし、ここ数年のYoutube等ニューメディアの普及により、新聞やテレビニュースが報じない、過去の歴史や政治の裏側に隠されている事実を知るようになり、日本は「ダメな国」なのではなく、「ダメにさせられている国」なのではないか、と考えるようになったのです。
80年前に日本は太平洋戦争(日本人は当初大東亜戦争と呼んでいたが、後に米国への侵略戦争であったということを印象付けるために米国の要請で太平洋戦争として教科書の記載が変更)に敗れ、GHQは、二度と自分から戦争を起こせぬ、米国に牙を剥かない仕組みを埋め込んだ形で日本国憲法(特に第9条)を制定、日本の国防を米軍に依存する構造が産まれました。
それ以外にも日米地位協定第25条に基づき日米合同員会が設置され、非公開協議で在日米軍の治外法権や基地問題に関する様々なことが決められたり、財政法第四条や第六条で国債の発行に制約を設けられたことが現在の財務省の財政規律重視やPB黒字化目標設定にも繋がっています。
更には、先日亡くなったアーミテージ元国務副長官とジョセフ・ナイ元国防次官補が毎年アーミテージ・ナイ・レポートを毎年発行し、この内容が郵政民営化によるかんぽ、ゆうちょ資金の外資への解放(2005年)、集団的自衛権の行使容認(2014年)、LGBT理解増進法(2023年)等の政策実行に強く影響したといわれています。
これ以外にも、農業分野、エネルギー分野、IT分野等、日本の存立を左右する重要な政策に米国の意向が深く反映している事例はたくさんあるようです。
もう一つ大きいのは教育です。我々は戦後教育で、日本が日中戦争で南京大虐殺をし、太平洋戦争では真珠湾攻撃で先制攻撃し、米国との圧倒的な軍事力、国力の差により敗北した、敗戦国であり、二度と戦争を起こさないことを誓っている国である、と教わりました。それによって我々は、意識せずとも海外に対する強い自虐史観を持って育ち、アメリカや中国に対する意見を言うことも、友人と政治の話をすることさえも、どこか憚られる感覚を持ってしまっています。しかし、この教育についても米国の「日本人の牙を抜こう」という強い意向が働いていると言われています。
私は、米国の人々や文化が大好きですし、日米同盟に何ら異議を唱えるつもりはありません。しかし、戦後80年、米国の要求を聞き続けた結果、米国への依存度が高まり、それに対応して日本の国力、競争力が落ちたというのは紛れもない事実だと思います。
昨今、この米国の意向を日本の政策に反映させてきたのが、自由民主党と財務省であるとしてやり玉に上がることが多いですが、では、これらを単純に潰せばいいのかというとそう簡単な話ではないはずです。
何を壊し、何を残すべきなのか、皆さんからのご意見、提言をお待ちします。
